Sunday, July 24, 2005

【撮影】巨大ポラロイド写真譚


話を聞いた時から面白そうだったので3ヶ月ぐらい前からずーっと気になっていた授業で、ここでも数回触れている、20x24ポラロイドカメラのワークショップへ行ってきました。

 当日、スタジオに入った瞬間に感じたのは、目の前にあるカメラの大きさ。大きさと重さは事前に聞いていたのですが、実物には想像を遥かに上回る存在感がありました。というか、1週間経った今でも、自分の背丈よりも背が高くなるカメラに対する強い印象が全く消えないぐらいです。

 カメラも出てくるプリントのサイズもビックリでしたが、それに加えて現像手順や出てきたポラロイドプリントの画質ももちろんビックリでした。



 撮影後プリントを取り出すまでの手順や現像プロセスなどは、一般的に使われている4x5サイズの59フィルムと全く一緒でした。印画紙の大きさのためフィルムが最初からパックになっておらず、カメラの中に別々に配置された印画紙とフィルムが別々に収まっていて、薬品パックは木箱の下の方、プロセス用ローラーのすぐ上にストックし、フィルムと紙がローラーを通る時に間に挟まるようになっています。

 モーターの力で木箱から下に出てきた撮影済みのプリントの現像時間は巨大プリントでも1分。そしてこれまた普通のポラロイドと同じ薬品臭を持つ黒いフィルムを剥がすと・・・




 出てくるプリントは、59フィルムの銀粒子の細かさをそのままに20インチx24インチに拡大した、今までに見たことも無いような滑らかな高画質写真。イメージそのもののクオリティに目をつぶれば、先日触れたLori Nixの作品(8x10のネガを20x24に引伸し)の粒子感のなさにも勝る滑らかさ。それでも輪郭はしっかりと出ていて、これまたビックリ。

 撮影終了後、出てきたプリントを前にデジカメで写真の写真を撮ろうと思いましたが、フレーム内にスケールを置くことで比較できるサイズはともかく、デジカメでは粒子感の無さを残せそうでは無かったので撮りませんでした。こんな時に限っておバカな写真を撮ったので、なんとかしてここでお見せするための手段を考えてみますが。

 プリントだけでなく、間違いなく1枚65ドル+スタジオ代払うだけの価値はありますので、チャンスと財布に余裕がある方は、サンフランシスコとアメリカ東海岸だけでなく、東京と大阪にも同型のカメラがいらっしゃるようですので、歴代大統領も撮られたカメラを使って遊んでみるのも楽しいかと思います。

Friday, July 22, 2005

【etc.】フィルム原理主義者の所信表明


(The Embarcadero@Bryant St., San Franciscoにて、P30tにFuji Provia 100Fで撮影。)

久しぶりにこっちを更新することになります。写真の方しか見ない方お待たせいたしました、というよりはごめんなさい。もうちょっとがんばります。

 冒頭の写真とは関連性が全くない話ですが、ここではブログ形式を使ってるため、鮮度が命だから写真は撮ったらすぐ貼らなきゃ、と頭の片隅では考えているんですが、デジカメで電子的に記録され、Photoshopで加工された絵は写真としてお見せしたくはないんです。でもどこかでイメージを電子化しないとここに貼付けできませんので、作品として取り扱う本命の写真は、少なくともフィルムで撮影すれば、絵がネガ(ポジ)として残り、多少のごまかしはできますが、フィルムを見ればビフォーアフターの記録が一目瞭然ですので、撮ったという事実自体を物理的に消し去ってやりなおすことができるデジタルよりはまだいいかな、と感じます。

 なぜフィルム原理主義者を名乗り出したかというと、インプレス・PC Watchに連載されている、「山田正平のRe:Config.sys」という連載コラムで去年の11月に取り上げられた「デジタルデータの確からしさ」の中で、JOCの公式写真を撮影しているある写真家が、撮影した写真からオブジェクトを消し去った上で公開したことを取り上げていたから。

 写真とは事実を忠実に記録し、それを忠実に受け手に伝えるある意味二流のメディア、という解釈のもと写真を撮っていますので、この記事に取り上げられた行為は写真家としてあるまじきこと、と受け止めています。デジタルは「修正」できるからね、と平気で事実を変えてしまうような人間に写真家とかカメラマンを名乗ってほしくはないし、そんな人に事実を伝える写真を売ることでお金を稼がせるなど持ってもほか。そしてそんな行為が簡単にできてしまうデジタルカメラで撮った写真は写真なんてものではなく、ただのデジタルデータだ、という時代錯誤も甚だしい短絡的な見解かもしれませんが、ようはデジカメとPhotoshopを使ってできることをやり始めたら、基礎の基礎である写真を撮る技術そのものが必要なくなってしまう上、ごまかしがきいてしまうことから人間的にダメになってしまいそうですので、記録写真といわゆる「本気」の写真はデジタルでは撮るつもりはありません。「写真」本来の意味合いや「事実を忠実に伝える」という目的がない、いわゆるフォトコラージュを作る時には惜しみなく最大限にPhotoshopを使いますが。

 休眠期間をカウントするとここを始めて間もなく1年が経つというのに、その間に暗室で引き延ばす楽しさを見つけた上、その過程で現像薬品のにおいが鼻についてしまったので、印画紙やフィルム、消耗品等を買い続けた結果、写真を電子化する道具まで手が出せず、未だにラボでCD焼いてもらっている状態ですので、写真をお見せできるのが撮影してからかなり後になってしまいます。そろそろその辺の機材をそろえ始めますのでご期待を。

Friday, July 08, 2005

【etc.】すこぶる高度なジオラマ写真: Lori Nix

Chromeworks でスライド現像の仕上がりを待っている際、Bryant St. の反対側にある暗室用品メインの写真用品店で、期限切れ間近フィルムを見ていたら、あたかもPhotoshopで加工したかのような街並みの写真を使ったポストカードがありました。

 その写真はきれいだったんですが、なんともいえない不気味な色合いだったので、それに惹かれたかのように、その作者のミニ写真展に行ってきました。

 その写真家は Lori Nix という人で、きれいだけどどこかあり得ない風景のジオラマをつくり、それをリンホフで撮っているみたいです。実際にプリントを見てみると、確かにジオラマなんですが、大判で撮影しているせいもあって、とてもキメが細かく、ジオラマの中でちょっと遊んでいてもそれを笑うことができないくらいの感動がありました。

 Webサイトでも作品が見られるようですが、ベイエリアにお住まいの方はぜひ実物をご覧になって。あと少しの間、サンフランシスコの3rd St.の I-80高架下にあるレンタルラボ、Raykoに展示されているはずですので。

 あのキメの細かさ、遊び心、そしてLoriが写真に含ませた深そうな意味・・・ちょっと病み付きになります。


<チラシの裏>
Lori Nixの写真を見た後、いつもお世話になっているCMEHAPPYのgOさんが、本城直季のことに少し触れられていたので、検索し彼の作品を見たところ、「絶対ミニチュアだよこれ」と思ってしまったのは公然の秘密。
 本城直季の作品は、きっとリアルな風景です。だって名駅周辺のジオラマをここまで作り込めたら、神様以外の何者でもないと思う。
< /チラシの裏>

Saturday, July 02, 2005

【Tips】E-6 x C-41 aka. クロスプロセス

先日、カラースライド用のE-6現像液が期限切れ寸前だったので、こりゃもったいないわ、と貧乏人根性全開でカラースライドフィルムとC-41で現像する黒白ネガフィルム・イルフォードXP2を同じ現像タンクで現像しました。


 ネガをE-6で/ポジをC-41で現像すると、使った現像液によってE-6で現像すればネガがポジに、C-41で現像するとポジがネガになるんですが、どちらとも色調がメチャクチャになります。仮にそれをスキャンして、Photoshopで補整をかけても戻らないぐらい色が飛んだりします。特にE-6で現像したネガは、フィルムの種類によってベースの色が違ったものになります。ちなみにこの時現像したXP2は、とてもきれいな青色のスライドになりました。



 クロスプロセスの例。Lubitel 166B に Ilford XP2 を入れて撮影後、E-6で現像。ちなみにこの人は、Gilbert Marosi というフランス人画家。毎週カフェで北京語の個人レッスンを受けてたりします。

この逆、つまりポジをC-41でカラーネガとして現像したこともあります。この時はKodakのEktachromeを使ったんですが、オレンジベースに彩度が強調されたネガになり、これはこれで面白い絵になりました。(そのうち暇を見つけてスキャンしますので、今しばらくお待ちいただけますよう。)


ただ、クロスプロセスは現像液を激しく劣化させるようで、ここベイエリアでは、たいていのラボはクロスプロセスを受付けないか、受付けてもかなりの追加料金を取られます。また、自家現像する場合でも、ポジとネガを同じタンクに放り込んで同時に現像すると、どちらかの色調が移ってしまうらしく、本来してはいけないようです。
 現に今回それを知らずにネガフィルムと一緒に現像してしまったポジフィルムは、Photoshopでの補整技術が未熟なことを考慮しても、異様に黄色っぽいスライドになりました。↓


Friday, July 01, 2005

【Tips】ベイエリアでのスライドフィルム現像

普段フィルム代、現像代、そして現像引き延ばしの楽しさから、黒白フィルムをメインに使っているんですが、カラーもやっておかないとねぇ、と思ってカラースライドの授業を取りました。
 カラースライドフィルムは、ネガに比べてフィルムそのものが高価で、現像に関してはカラープリントの値段と変わらないものの、現像自体をやってくれるラボが限られます。E-6現像液を使って自家現像もできるんですが、黒白はともかく、カラーネガよりも温度管理が厳しいこと、そして日本では劇薬にあたる薬品を使うことから、現像だけでなく後処理も大変なので、準備から乾燥まで約2時間を費やすよりも現像に出した方が現実的です。


 ちなみにここシリコンバレーで本格的にスライド即日現像をやっているラボはCalypsoという、サンタクララにあるラボのだけみたいです。ただここのラボ、マウンテンビューからだと車を持ってない貧乏学生には行きにくい場所にあり、たとえバスと電車でたどり着けたとしても、徒歩圏内に現像待ちの時間(約2時間)をつぶせるような場所がありません。
 なので、いつもはマウンテンビューから汽車で1時間強で、球場近くにラボが2軒あるサンフランシスコに行きます。そのうちの1軒、Bryant St.の4th St. と5th St.の中間にあるNew Labは、ベイエリア一円のラボを窓口として現像を引き受けているほど規模が大きく、夜8時まで開いているため、サンフランシスコで現像する場合はここに出すことが多いようですが、現像の質があまり良くありません。今まで2回ほど使ったのですが、一度目は最後のフレームに穴が開けられていて、2回目の時には撹拌不足と思われる無色の斑点が乗った状態で帰ってきました。
 New Labのクオリティにはうんざりしたので、それ以来 "Chrome Works" という、Bryantを2ブロックほどEmbarcaderoの方へ向かったところに出すようになりました。夕方6時閉店と閉まるのが少々早めなんですが、New Labよりもわずかに安い上に品質がよく、フレームには番号を振ってくれるので助かります。



Chrome Works
425 Bryant St. San Francisco, CA 94107